病気の知識
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消化器系・泌尿器系・心血管系疾患
消化器系疾患
肝臓障害
肝臓は腹部の最も前方に位置した大きな臓器で、それは腹腔と胸腔との間を分割する横隔膜に接しています。肝臓は生命に欠くことのできないもので、100以上の重要な機能を引き受けています。たとえば、毒物や薬物の解毒、脂肪の代謝、炭水化物の貯蔵、胆汁や血漿蛋白や他の物質の製造、血液の凝固に関与しています。
肝臓疾患は大抵の場合、その病気がひどくなるまで見つけることは難しいものです。それと云うのも肝臓組織は多量にあり、しかも肝臓は部分的に再生することができるからです。肝臓疾患の徴候は障害の程度や場所によって様々です。肝臓の障害の質や程度を知るために、種主血液検査や超音波検査が必要です。
入院して治療をしなければならない肝臓疾患のタイプもあれば、通院しながら自宅で治療が行えるものもあります。そして完全に治せるものもあれば、症状を抑えるだけしかできないものもあります。
泌尿器系疾患
慢性腎臓病(尿毒症症候群)
正常な腎臓では血液を濾過し、老廃物を取り除き尿中に排泄します。
感染や炎症によって損傷を受けた腎臓は正常な濾過能力のいくらかを失います。そして、その老廃物質は血流中に溜まっていきます。この物質の再循環が続くことにより、病気に陥ります。病気の症状は腎臓全体の約3/4が障害を受けて初めてみられます。
この意味は、病気に罹ったペットが長い間症状を見せなくても、実際には慢性的(ずっと以前から)な腎臓の病気に陥っていたということがよくあるということです。
慢性腎不全の症状には嘔吐、喉の渇き、尿の回数が増える、食欲不振、元気消失、そして呼吸状況の悪化などがみられます。
さらに、この状況が続けば虚脱、ケイレン、昏睡に陥り死に至ります。
慢性腎不全は治りませんが、多くの例でコントロールすることができます。
飼主とドクターがともに協力してきちんと管理すれば、多くのペットは正常に近い生活を行うことができます。
心血管系疾患
心臓弁膜機能不全
心臓の弁は心臓の血液を一方向にだけ流すバルブです。もしこの弁が閉まらなければ(弁閉鎖不全)、血液は逆流してしまいます。弁の機能不全は生まれた時からあったり(先天的)、他の病気に続発したりします。
心臓には左右2ケ所ずつ(計4ヶ所)に弁がありますので、そのいずれかが侵されると左または右に、あるいは両方の心不全が起こります。左側心不全の症状は呼吸困難、咳と体力の衰えです。右側心不全では食欲や体重の減少、腹水が溜まり、時々吐いたり下痢したり、足が腫れてきたりします。多くの症例では左右の心不全の両方の症状が現れます。
内分泌系疾患
アジソン病(副腎皮質機能低下症)
アジソン病とは副腎ホルモンの産生が低下する病気です。この病気は感染や癌や薬物、あるいは不明の原因によって副腎が破壊されてしまうために起こります。脳下垂体の疾患もこの病気を引き起こすことがあります。
副腎皮質ホルモンの産生が低下すると体に塩分(ナトリウム)を保てなくなり、血液量は少なくなり、心臓の筋肉は弱り、糖や脂肪の代謝もうまく働かなくなります。ストレスに耐えられなくなるのがこの病気の一番の特徴で、アジソン病発作と呼ばれる虚脱状態になります。
正しい診断と治療には各種の血液検査や副腎機能検査が必要です。
副腎機能不全にまずしなければならない治療は点滴注射を行い、薬を与え、臨床検査を続けなければなりません。病状が良くなっても、恐らく治療は一生必要でしょう。
クッシング病(副腎皮質機能亢進症)
クッシング病とは、過剰に副腎ホルモンが分泌される副腎の障害です。副腎皮質機能亢進症の原因は、脳下垂体機能の異常、副腎の腫瘍、副腎皮質ホルモンを使った療法または説明できない副腎の活動し過ぎが考えられます。
副腎皮質機能亢進症はゆっくりと進行する病気で、初期の徴候はしばしば見過ごされてしまいます。それは食欲の増進、多飲多尿、活動が鈍りお腹が大きくなることです。この病気が進行するとそのような症状がどんどんひどくなり、ペットは肥満体になり、息切れが激しくなり、身体の両側で左右対称に毛が抜けてきます。症状によっては脱毛だけしか見られないこともあります。
症状を診断し、その原因を見つけ治療計画をたてるため、広範囲にわたる臨床検査とレントゲン検査が必要になります。いくつかの動物では内科的な治療のみに反応しますが、その他は外科的治療と、内科的治療の両方を併用しなくてはなりません。患者にとっては不幸なことに治療しても悪化していくものもあります。
治すというよりはむしろコントロールするのが、ほとんどの副腎皮質機能亢進症の症例における治療結果です。治療に用いる薬が副腎ホルモンを抑えすぎてしまい、アジソン病として知られているショック様の症状を起こすかもしれないので、治療は注意深く見守りながら行わなければなりません。
猫の甲状腺機能亢進症
甲状腺機能亢進症は歳をとった猫の病気で、甲状腺ホルモンの過剰産生によって起こります。このホルモンの産生が増加する最も多い原因は甲状腺の腫瘍です。これらの腫瘍は良性(癌ではない)のこともあれば悪性のこともあります。甲状腺にこの腫瘍がなぜできるのかは判っていません。
甲状腺ホルモンが過剰産生された時の症状は、がつがつした食欲にもかかわらず体重が減ったり、頻繁にお腹がぐるぐる鳴ったり、喉の渇きや尿量が増えたり、絶えず落ち着かなかったり、頻繁に鳴いたりして声を出し、正常なグルーミング(毛の手入れ)をしなかったり、心臓の動きが速いなどが挙げられます。心臓に与えるこの影響はひどく、うっ血性心不全をもたらします。
手術で甲状腺を取り除くことが勧められる治療です。もし甲状腺がすべて取り除かれれば、命のある間、甲状腺ホルモンを与え続けなければなりません。潜在している腫瘍が悪性かもしれないし、長期にわたって薬を与えると激しい副作用が起こるので、長期にわたる内科的治療はお勧めできません。
甲状腺機能低下症
甲状腺機能低下症とは甲状腺ホルモンが量的に少ないか、身体が異常に消費することによって起こる病気です。いくつかのペットでは脳下垂体も関連していますが、多くの例では甲状腺によるホルモン産生が不十分なことで起こります。
この病気は2才以下のペットでは希にしか見られませんが、中年や老年のペットでは良く見られます。以下のすべてかいくつかが症状としてみられます。
スタミナの減少、睡眠時間の増加、寒さに弱くなる、乾いた被毛や皮膚、早すぎる鼻面の白髪、脱毛、発毛が遅い、繰り返す皮膚感染、皮膚に黒い色素が現れることなどです。顔が腫れたようになり、雌では発情のサイクルが不順になり、そしてまた受胎率も低下します。雄は睾丸が萎縮して雌に対する興味が少なくなります。
糖尿病
糖尿病はインスリンの欠乏によって起こる病気です。インスリンは膵臓で造られるホルモンで、身体の細胞が血糖を利用するために必要なものです。インスリンがないと、糖は血中にとどまりそして結局は尿へと排泄されます。これは尿量の増加と喉の渇きを起こします。身体が血中の糖を利用できないために多食が始まります。この病気の過程でケトンと呼ばれる化学物質が蓄積し、吐き気や脱水を起こします。治療してやれない動物はついには昏睡状態に陥り死にます。
糖尿病は根本的に治せる病気ではありませんが、適量のインスリンを投与することと食事管理でこの病気をコントロールすることができます。
生殖器系疾患
前立腺炎
前立腺は膀胱から出ている尿道を取り囲む組織で、犬猫ともに雄に特有のものです。ここで、精液中の液体成分のほとんどが作られます。前立腺炎とは前立腺が細菌感染を受けるものです。この病気の原因となる細菌はペニスから侵入し、前立腺まで広がります。雄であれば何歳でもいつでも侵されます。この病気にかかるとかなりの痛みをともない、よく背中を丸めるような格好をします。ペニスから分泌物(膿)が出るものもあります。すぐに集中的な治療をしなければなりません。
前立腺炎の治療は抗生物質やホルモン剤の投与、そして時には手術が必要です。
犬の前立腺肥大
前立腺は膀胱から出ている尿道を取り囲む組織で、雄に特有のものです。ここで精液中のほとんどの液体成分を作っています。前立腺肥大は性ホルモンのアンバランスが原因で異常に大きくなるものです。これは一般的に5才以上の犬に見られます。前立腺が大きくなるにつれ、その真上にある結腸を圧迫するため便が出にくくなったり痛みを伴ったり、その結果便秘になります。前立腺肥大は、会陰ヘルニアの誘因になったり、恐ろしい前立腺癌の症状とも似ていますので、早期診断と治療を受けてください。
前立腺肥大の治療はその程度に応じて内科的および外科的な治療を行います。去勢手術(精巣切除)により前立腺は小さくなります。一般にはこれが一番良い方法です。
前立腺肥大に対し行う治療は雄としての能力を減退あるいは無くなります。
子宮内膜炎
子宮内膜炎とは子宮内膜が感染したために起こる炎症で、一般に何ら病的な症状は示しませんが、不妊症の原因となります。この病気にかかった犬は正常に発情が来て交配をしますが、受胎率は非常に低くなります。
子宮内膜炎にかかった犬の中には子宮蓄膿症と言われるもっと危険な感染症へと進行する場合があります。子宮蓄膿症になると状態が非常に悪くなり、吐いたり、水を異常に欲しがり、何度も排尿をしたり、膣からおりものが見られたりします。子宮蓄膿症は治療しないとすぐに死んでしまいます。
子宮頚管から採取したサンプルを調べることや超音波検査で子宮内膜炎を診断します。
長期間(4~5週間)に渡る抗生物質の投与が一般に必要です。
子宮蓄膿症
子宮蓄膿症とは、細菌感染によって子宮の中に膿が溜まる恐ろしい病気です。これは仔を生んだことのない中~老年の雌によく見られますが、時々若い犬でも見られます。普通発情の2~3週間後に症状が現れ始めます。
子宮蓄膿症はホルモンの影響で、細菌感染に対する抵抗力が低下するために起こります。発情期間中、開いている子宮の入口から細菌が侵入し子宮への感染が成立します。もし感染を受けた後、子宮の入口(出口)が閉じてしまうと、かなりの量の膿が子宮の中に溜まったままになります。
子宮蓄膿症の症状として食欲減退、異常に水を欲しがる、元気がなくなる、吐き気などが見られます。中には膣から膿汁が出てくることもあります。この病気は数週間に渡りじわじわと進行していきます。
内科的な治療と外科的な治療がありますが、手術をするのが最も一般的です。手術を受けることで再発することはなく、それ以後わずらわしい発情が来なくなるという利点があります。内科的な治療は将来仔を生ませたいと思っている若い動物や手術に対して危険性が高すぎるときに行います。中には手術に耐えられるようになるまでの間、内科的治療を行う場合もあります。